【初心者向け】画像検査のためのレンズ基礎講座-絞り/テレセントリック/収差

絞りによる画像の変化と「分解能・解像度・解像力」の違い
レンズの絞り(F値)を絞り込むと、ピントの合う奥行き範囲(被写界深度)は深くなります。しかし、光量が減るだけでなく、エッジの輪郭が甘くなり、細部がぼやけてしまう現象が発生します。
ここでよく混同されがちな「分解能」「解像度」「解像力」の定義を整理しておきましょう。
| 用語 | 定義と特徴 |
|---|---|
|
分解能 (Resolution) |
ごく近接した2つの点を「別々の点」として分離して見分けられる限界の細かさ。 |
|
解像度 (Resolution) |
カメラ素子やディスプレイが表示・保持できる情報(ピクセル数)の緻密さ。 |
|
解像力 (Resolving Power) |
1mmの間に白黒のペア線が何本識別できるか(単位: lp/mm)を表す、レンズ本来の限界性能。 |
英語圏ではこれらがすべて「Resolution」と表現されるため混乱しがちですが、日本語の正確な概念区分を理解しておくことが適切なスペック選定に重要です。
なぜ絞るとボヤける?光の「回折現象」と波の性質
絞りを極端に絞り込んだ際に画像がボヤける主な原因は、光の波の性質によって起こる「小絞りボケ(回折現象)」です。
実験:小孔を通る光の挙動
指向性の高い光をピンホールに通す実験を行うと、光はまっすぐ進むだけでなく、穴の縁を中心に同心円状のリング(回折パターン)を描いて広がります。開口部が広い場合は素原波が強め合って直進光が優勢になりますが、絞りが狭くなるにつれて波の回り込みの影響が強調され、像の鮮明さが失われます。
また、用途に応じた専用設計のラインナップも存在します。ボトルの内側面を検査するための内面検査専用レンズ(VS-WAシリーズ)や、高速ラインで流れる製品をブレずに撮影するための明るい設計(VS-085シリーズ)、さらにビス(突起物)の脱落による異物混入を防ぎたい食品業界向けのビスなし設計(VS-MCH1)などが挙げられます。
画像の見え方を左右する「いろいろな収差」
レンズを通った光が理想的な1点に集まらず、像が歪んだり滲んだりする現象を「収差」と呼びます。大きく「単色収差」と「色収差」の2種類に分類されます。
単色収差(単一波長で発生するズレ)
- 球面収差: レンズの中心付近と周辺部を通る光で結像位置が異なり、点がボケる現象。
- コマ収差: 斜めから入射した光により、画像周辺の点像が彗星(コメット)のように尾を引いて歪む現象。
- 非定(非振)収差: 縦方向と横方向でピント位置が立体的にズレ、線が二重に見える現象。
- 像面収差(像面湾曲): 結像面が平面にならず曲面化するため、画面中心にピントを合わせると周辺がボケる現象。
- 歪曲収差(ディストーション): 画像全体が樽型や糸巻き型に歪む現象。外観検査や寸法計測では大きな誤差原因になります。
色収差(光の波長・色の違いで発生するズレ)
- 倍率色収差: 波長ごとの屈折率の違いにより、色によって像の大きさが変わり端部で色ズレが生じる現象。
- 軸上色収差: 光軸上において波長ごとに前後方向の焦点位置がズレ、エッジ部分に色の滲みが出る現象。
※近年では、低ディストーション設計モデルや可視光〜近赤外(IR)波長補正レンズなど、特定の収差を極限まで抑えた高精度レンズが多数ラインナップされています。
寸法測定の要!「テレセントリックレンズ」の仕組みと種類
テレセントリックレンズとは、主光線が光軸に対して平行になるように設計されたレンズです。一般的な同焦点レンズと異なり、ワークの高さや距離が上下しても撮影倍率がほとんど変化しないという特長を持ちます。
テレセントリックレンズの3つのタイプ
- 物体側テレセントリックレンズ: 産業用として最も一般的。ワーク高さが変わっても倍率が一定に保たれるため、寸法計測の誤差を劇的に低減します。
- 両側(ダブル)テレセントリックレンズ: 物体側・センサー側の双方で平行性を維持。ワークの高さ変動だけでなく、カメラの設置位置ズレにも強い最上位仕様です。
- 像側テレセントリックレンズ: センサー側で主光線を平行にする設計。カメラ交換やセンサー面の調整が必要な特殊環境・カスタム製品向けです。
まとめ&無償撮像検証ルームの活用法
今回の「レンズ基礎講座」でお伝えした重要ポイントを改めてまとめます。
- 絞りと回折: 絞り込むと被写界深度は深くなるが、極端に絞ると「小絞りボケ(回折現象)」で解像感が失われるためバランスが重要。
- 分解能・解像度・解像力: 単なるピクセル数だけでなく、レンズ本体が持つ限界性能(解像力 lp/mm)を意識して選定する。
- 各種収差: 単色収差や色収差は画像の歪みや滲みの原因になる。用途に応じた歪曲(ディストーション)対策レンズなどの選定が必要。
- テレセントリックレンズ: ワークの高さや距離が変わっても倍率が変化しないため、高精度な寸法計測には必須の選択肢。
これらの特性を踏まえて、実際の検査環境に合わせた最適な光学系を選定していきましょう。

