レンズ選定時に必要な項目をおさえておきましょう。
素子サイズ = 画素サイズ(V) or (H) x 有効画素数(V) or (H)
視野 = 素子サイズ(V) or (H) / 光学倍率
レンズの物体側鏡筒端から物体までの距離
撮影したい対象物
使用する用途、アプリケーション
例)OCRなど
カメラから被写体までのスペース
物体面が前後してもピントがボケずに鮮明であると受け入れられる範囲
照明方法・形状を決める. ・被写体の立体的条件や設置条件から決める
レンズが可動するシステム構成か、可動はなくても振動環境下であるかどうか確認
イメージサークルより大きなセンサーサイズを選定した場合、中央部分のみ撮像し周辺が暗くなる、あるいは結像しない、「ケラレ」という現象が発生します。
撮像素子は長方形のため□の部分が映像化される
レンズとカメラの装着部はネジサイズやフランジバック(FB:取り付け面から焦点面までの距離)に応じマウント方式が異なります。(図1-2参照)エリアセンサーカメラではフランジバック(FB)が17.526mmのCマウントが一般的で、セキュリティー用のカメラにはFBが12.50mmのCSマウントがあります。ラインスキャンカメラはカメラメーカーに依存しており、比較的多いFマウントはFBが46.5mmですが、他にも様々なマウントがあり、採用するカメラに適合するマウント方式のレンズを選択する必要があります。たとえばCマウントタイプのカメラでは、ねじサイズは同じですがFBの違うCSマウントのレンズは使用できないので注意する必要があります。
現在、直径φ7~17mmのカメラ側オスネジタイプや20mm角程度の小型カメラもあり、これらはカメラメーカーにより独自の規格のFBやネジサイズのマウントが採用されています。当社では一部のモデルで小型カメラ対応のレンズを用意しています。また、カメラによってはたとえばCマウント方式を採用していても、カメラ内部にフィルターや機構的な干渉物があるため、レンズ側の出っ張りなどが干渉し取り付けられない場合がありますので、レンズ及びカメラのメカニカルバック(図1-2参照)を確認する必要があります。当社のレンズは、マシンビジョンで最もポピュラーなCマウントを標準採用しています。Cマウント以外の方式でもマウントアダプタを用意しているカメラメーカーもありますし、ご相談頂ければカスタムでの対応も可能です。
アプリケーション用途に応じた種々の環境に応じて対象物をカメラで的確にとらえるために、最適なレンズの選定が重要です。
光学倍率とは、撮像したいワークの視野を何倍にしてカメラに取り込むかを示した値です。
光学倍率 = カメラ(V) or (H) / 視野 (V) or (H)
※カメラの寸法はピクセルサイズ×有効画素数にて求められます。
f = WD x 光学倍率(素子サイズ(V or H) / 視野(V or H))
次は装置のスペースやカメラの設置距離、レンズのWDなどから条件を絞ります。
視野(V or H) = WD x 素子サイズ(V or H) / f(焦点距離)
※これらの関係式により同じ被写体までの距離(WD)の場合、焦点距離(f)が小さいほど視野が広くなり(広角レンズ)、大きくなるほど視野が狭くなります。
また同じ大きさの被写体を映した場合、焦点距離(f)が小さいほどWDが短く大きいほどWDが長くなります(望遠レンズ)。
ステップ1.2である程度のレンズが絞れました。次はどのような種類のレンズがあるのかを見ていきましょう。
概要 | 長所 | 短所 | |
---|---|---|---|
テレセントリックレンズ | レンズの主光線がレンズの光軸に対し平行な構造を持つレンズ。 同軸落射照明では必須。 |
被写界深度内において寸法精度が高い。 中心と周辺で見え方が変化しない。 寸法計測に向いている。 |
レンズが大きい。 高価である。 |
マクロレンズ | 近接撮影用に設定したレンズ。 | TVディストーションが小さい。 小型・軽量で耐振性大。 |
一定のWDでしかピントが合わない。 視野範囲(倍率)を限定。 |
固定焦点レンズ | 無限遠まで結像し、フォーカス調整やアイリス調整が可能。 | 視野、WDが任意に変えられる。 低価格。 大きな視野に最適。 |
近接域においては、周辺の歪みが大きい。 周辺寸法が変動する。 |
大型素子・ ラインスキャンレンズ |
上記レンズのイメージサークルが大きいレンズ。 | 周辺光量差が小さく長作動距離。 | サイズが大きく重量が重くなりやすい。 |
主光線がレンズ光軸に対して平行なレンズです。同軸落射照明を要する場合物体側テレセントリックレンズが有効です。被写体に対して垂直な照明の正反射光を受光するのに有利です。
被写界深度方向の寸法計測で数値の変動が小さく、周辺がほとんど歪まない[図1-1(a)(b)参照]ため高精度計測に向きます。
結像位置での被写体の光学像の大きさがレンズから被写体までの距離(WD)には影響しないという特徴があります。但し、視野が大きくなればなるほどレンズサイズが大きくなり高価になります。
レンズ光線
斜めのチャートを真上から見た場合は遠近感がでているのが非テレセントリック光学系のマクロレンズでテレセントリック光学系はチャートがまっすぐに認識できている。
コネクタのピンを真上から見た場合、画面両端のピンの側面が非テレセントリック光学系のマクロレンズでは確認できるのに対し、テレセントリック光学系は完全に真上から見た画像となるためピンの倒れなどが検出しやすい。
近接(被写体までの距離WDが100mm前後)の撮影用に光学設計を行ったレンズです。たとえば数mmオーダの対象を高いズーム比率で撮影できるものがあります。当社のマクロレンズは一定のWD条件でピントが合い、その倍率で歪みがなく分解能の高い撮影ができるような設計を施しています。ただ、一定のWDの範囲でしかピントが合わないため、取り付けを的確に行う必要があります。テレセントリックレンズより小型で、電子基板検査などに幅広く採用されています。当社では固定倍率、固定絞りから可変倍率、可変絞りのメガピクセル対応製品を用意しています。
もともと監視用に開発されたレンズで、WDは無限遠まで対応できる設計となっています。大半が絞りやフォーカスの調整ができ、明るさの変更やピントの調整が容易です。価格が安いため、使用頻度は高い。但し、近接で使用する場合、周辺の歪みが大きく、寸法計測には不向きです。当社では、マクロ域での性能を向上させた製品をラインナップしています。
主にラインスキャンカメラ用に使用されます。ラインスキャンカメラは受光側の寸法が35~80mm程度必要なタイプが主流、最近の高画素対応型は80mm位の受光寸法が必要なものもでてきています。通常の2次元カメラ(エリアセンサーカメラ)用レンズが使用できない場合が多い。このレンズは受光部面積が大きいため2次元カメラ用としても使用可能で、レンズ中心の収差の小さい光線を使用することで安定した解像力が得られます。ただし、レンズ自体が大きく重いので、可動部への取り付けには不向きであることと、レンズマウント方式がメーカーごとに異なるため、使用するカメラのマウントを必ず確認し選定する必要があります。
レンズと組み合わせて使用する代表的オプションについて
STでは、標準のレンズに装着することで視野やWDを変える為のオプション品を用意しています。
主にCCTVレンズで近接撮影する際にレンズとカメラの間に装着する補助リングです。カメラとレンズの間を離すことでレンズのピント位置(WD)が近接域になります。視野範囲も必然的に小さくなります[図1-3(a)参照]。当社SV-EXRシリーズは0.2mmのスペーサーリングから50mmのリングの12種の幅広いラインナップを用意しております。
レンズとカメラの間に装着して、WDを変えずに簡単に倍率を上げる(視野範囲を小さくする)補助レンズです。但し、倍率が上がれば明るさは低減します(1/レンズ倍率の2乗分低減)。当社ではSV-Xシリーズで1.5倍から5倍までラインナップしています。[図1-3(b)参照]